2016年8月24日水曜日

南シナ海問題で台湾を抱き込みたい中国 WEDGEより

南シナ海問題で台湾を抱き込みたい中国 WEDGEより

南シナ海問題で中国と台湾について書いた記事を見つけたので紹介させていただきます。

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WEDGE Infinityより

南シナ海問題で台湾を抱き込みたい中国

台湾は南シナ海をめぐる中比仲裁裁判を受け入れないとしていますが、台北タイムズの7月14日付社説は、蔡英文総統は従来の「U字線」ではなく実効支配に基づく主権主張をしていると分析、南シナ海の「島」への主権主張に向けて新たな法的構成を構築するよう説いています。要旨、以下の通り。


絶対に判決を受け入れない

 南シナ海をめぐる中比仲裁裁判の判決(7月12日)は、台湾を法的に拘束するものではないが、台湾が支配する太平島(Itu Aba)を含む、スプラトリー諸島の全ての「高潮時地物」を岩に格下げしたのは驚きだ。太平島は、元来フィリピンが提起した仲裁に含まれていなかったが、台湾外交部の発表によれば、仲裁裁判所は自らの権限を拡大し、太平島は排他的経済水域(EEZ)を持たない岩であると宣言した。

 蔡英文政権は、馬英九前政権が支持していた中華民国の「U字線」政策への調整を行っていた。U字線、あるいは「11段線」は、1947年に中華民国により引かれた。これを、国民党が国共内戦に敗れ台湾に逃れた後、中国共産党が1953年にベトナムに配慮して「9段線」とした。蔡政権は最早、太平島への主権を「歴史的権利」ではなく、実効支配に基づき主張しているようである。12日夜、総統府は、判決を「絶対に受け入れない」との声明を発表したが、U字線への如何なる言及も避けた。

 総統府は、「太平島についての仲裁裁判所の決定は、台湾の南シナ海における島と付随する水域への権利を深刻に損なった」と述べた。太平島のみならず南シナ海の「島」への主権をU字線政策無しでいかに維持するのか疑問が残るとの議論があり得るが、蔡政権は、台湾の主張とレトリックを国際慣行に沿ったものとする努力をした。

 仲裁裁判では、台湾は「中国の台湾当局」と言及され、台湾外交部は「中華民国の主権国家としての地位を貶めるものだ」と非難している。しかし、「一つの中国」の枠組みの下での昨年の馬英九と習近平の会談を考えると、台湾と中国が連携しているとの認識を世界が振り払うのは困難かもしれない。国民党は、蔡政権はU字線を支持するよう主張しており、国民党には、台湾に共に先祖伝来の財産を守るよう呼びかけている中国との協力を主張する立法委員もいる。

 判決は、太平島を岩に格下げしたが、同島への台湾の実効支配や主権をはく奪するものではない。蔡は太平島につき強硬な姿勢をとるよう圧力を受けるかもしれないが、台湾の将来の法的議論の構築には、新たな基盤と努力が可能であるし、そうすべきである。


 南シナ海についての国際仲裁裁判所の判決は中国の「9段線」に関する主張を拒絶した点で歴史的意義を有するものとなりました。ただし、この裁決は、台湾との関係では、台湾当局を特殊な問題に直面させることになりました。
本社説は、台湾が主権を主張し、実効支配してきた「太平島」について、台湾としては、新たな法的論拠を構築して今後とも主権を確保する必要がある、と述べています。この社説の内容は、今日の蔡英文政権の立場を反映するものです。

台湾との共闘を探る中国

 蔡政権としては、裁定を受け入れることはできない、との立場をとっていますが、中国の本件裁定に対する立場とは一線を画しており、中国の主張する9段線を含むいわゆる「U字線」についての歴史的主張を行うことなく、ただ、「太平島」が島としての十分な条件を備えたものであり、単なる岩ではないとの主張を行うにとどめています。
 今回の裁定が台湾当局に言及した際、「中国の台湾当局」と記述した点は、複雑な中台関係に対して十分な配慮が行われていないものとして、台湾では与野党がともに裁定を非難しています。中国としては、今回の仲裁裁判の裁定直後に、台湾との間で、南シナ海問題全体に関し、「共闘できないか」との態度を示したことがありましたが、蔡政権としては、あくまでも「太平島」の主権問題は歴史的経緯をもつ9段線(「U字線」)の問題とは関係がなく、「太平島」という特定の島の主権問題であるとして、はっきりと中国の立場と距離を置く対応をしています。

 台湾では、これまで民進党政権、国民党政権ともに、「太平島」をEEZを持つ島として扱い、陳水扁、馬英九の両総統はともにこの「島」を訪問したことがあります。日本にとって直接関連を持つ島の主権問題として「沖ノ鳥島」があります。馬政権の末期に台湾は「沖ノ鳥島」は島ではなく、岩であるとの立場をとり、日本政府の立場に強く異を唱えましたが、蔡政権になってから、これを急きょ変更し、「沖ノ鳥島」が島であるか、岩であるかは、国際ルールに従うべきであって、それまでは台湾としてはいかなる法的立場もとらない、との基本方針を打ち出しています。

 日本としては、「沖ノ鳥島」をめぐる歴史的経緯、地理的条件などに加え、国際ルールについての自らの立場を十分に理論武装しておくことが、中国、韓国のほか、台湾に対処するうえでも喫緊の課題となるでしょう。

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